うつや適応障害で退職する場合の社会保険関連の手続き(労災以外)

【1】失業手当(雇用保険

失業手当を申請します。

失業手当は、正確には雇用保険法上の求職者給付のうちの基本手当です。

離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上であったときに支給されます(倒産・解雇等による離職や、特定理由離職者については、離職の日以前1年間の被保険者期間が通算して6か月以上である場合にも、基本手当が支給されます)。被保険者期間は、原則として、被保険者として雇用された期間を、資格喪失日の前日からさかのぼって一か月ごとに区切っていき、このように区切られた一か月の期間に賃金支払基礎日数が11日以上ある場合に、その一か月の期間を被保険者期間の一か月として計算します。

基本手当の日額は、その受給資格者について算定された賃金日額に、50%~80%の範囲の給付率を乗じて算定されます。賃金日額は、基本的に、算定対象期間において被保険者機関として計算された最後の6か月間に支払われた賃金の総額を180で除して得た数とされています。

一般の受給資格者の所定給付日数は、算定基礎期間により、90日~150日の範囲で定められています。特定受給資格者(倒産・解雇等離職者である受給資格者)や、就職困難者の所定給付日数は、一般の受給資格者よりも最長期間が長く設定されています。

経済情勢や受給資格者の状況等により、所定給付日数を超えて基本手当を給付する制度として、延長給付の制度があります。延長給付には、訓練延長給付、個別延長給付、広域延長給付、全国延長給付、地域延長給付があります。

基本手当の支給を受けるためには、離職後、まず管轄の公共職業安定所ハローワーク)に出頭し、求職の申込みをしたうえ、離職票を提出して受給資格の決定を受けます。受給資格の決定を受けた受給資格者は、指定された失業の認定日に管轄の公共職業安定所に出頭し、失業の認定を受けることで、失業の認定を受けた日分の基本手当を受給することができます。失業の認定は、求職の申込みを受けた公共職業安定所において、受給資格者が解職後最初に出頭した日から起算して4週間に1回ずつ直前の28日の各日において行うものとする、とされています。

受給資格決定日から失業の状態にあった日が通算して7日間経過するまでは、基本手当の支給を受けることができません(待期)。また、解職理由による給付制限により、正当な理由のない自己都合退職等の場合、待機期間の満了後1か月以上3か月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、失業手当が支給されません。

 

【2】傷病手当(健康保険)

傷病手当を申請します。

被保険者が療養のため、労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から支給されます。

支給額は、1日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の、直近の継続した12か月の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する額になります。

同一の疾病又は負傷を原因として障害年金や傷害手当(厚生年金保険)の支給を受けることができるときは、併給調整の仕組みがあるため注意が必要です。

支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月とされています。

受給手続としては、傷病手当金支給申請書に、医師又は歯科医師の意見書、及び事業主の証明書を添付して保険者に提出することになります。

 

【3】健康保険

退職する会社に健康保険証を返却し、健康保険資格喪失証明書を受け取ります。その後、新たな健康保険に加入します。

退職後の健康保険には、健康保険任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の被被用者になる、の3つの選択肢があります。任意継続と国民健康保険への加入申出には、期間制限が設けられているので注意が必要です。

 

【4】年金

厚生年金保険の被保険者の資格を喪失するため、国民年金の第1号被保険者の加入の手続が必要になります。

 

【5】税金

年末までに再就職しなかった場合、所得税の確定申告が必要となります。

住民税は、退職した月により一括徴収されるか、自身で納付するか異なります。住民税は前年の所得に基づき計算されるため、注意が必要です。

 

※参照:TAC出版『2022年度版 みんなが欲しかった! 社労士の教科書』